●ビットコインは12月30日に8万9340ドルまで反発し、12月下旬もETFからの資金流出が続く中で、再び9万ドルが視野に入った。
●米国のビットコイン現物ETFは、12月に合計で約18億9000万ドルが流出(うち約11億3000万ドルは12月18日〜30日の直近8日間)。最大の流出日は12月26日だった。
●アルトコインからビットコインへの資金ローテーションが価格を下支えしており、BTCドミナンスは11月26日の58.50%から59.66%へ上昇。デリバティブ市場のデータも、現物主導の反発を示している。
ETFからの資金流出は18.9億ドル、だがビットコインは9万ドルに接近
ビットコイン(BTC)は12月30日、Coinbase USで一時8万9340ドルまで上昇した。日中安値の約8万6600ドルからは3%上昇。この動きにより、ビットコインは過去10日間で最大級の1日上昇率に迫った。直近で同程度の上昇が見られたのは12月19日。
反発は、機関投資家による売り圧力が続く中で起きた。チャートデータによると、12月、米国のビットコイン現物ETFは合計で約18億8620万ドルの純流出を記録している。この売りは、Bitmine(ビットマイン)のトム・リー(Tom Lee)氏が指摘する「年末の税務戦略に伴う資金フロー」と一致する。リー氏は、こうした動きがボクシング・デー(12月26日)以降、暗号資産関連株や暗号資産価格を大きく歪めることがあると述べていた。

直近の動きに焦点を当てると、12月18日〜30日までの「直近8日間」での資金流出額は約11億2990万ドルにのぼる。FarsideInvestorsのデータによると、12月下旬で最大の単日流出が発生したのは12月26日で、税金対策を目的としたポートフォリオ調整が年末最終週にピークを迎えた可能性を裏付けている。
ETFからの継続的な資金流出は、12月のビットコイン価格の弱含みと軌を一にしている。ETFから資金が引き出されると、価格下落局面での受動的な買い支えが減少し、反発局面でも上昇が持続しにくくなる。この構造が、押し目で現物需要が見られたにもかかわらず、ビットコインが上値を伸ばし切れなかった理由を説明している。
アルトコインからの資金移動がビットコインを下支え
それでも、ビットコインは他の主要アルトコインと比べると堅調さを保っている。その背景にあるのが、暗号資産市場での資金ローテーションだ。トレーダーは年末特有の価格変動リスクを抑えるため、より流動性が高く、相対的に安全とみなされるビットコインへ資金を移している。
価格動向からも年末が近づくにつれ、売り手の勢いが弱まっていることが伺える。ETFからの資金流出が続く中でも、ビットコインは8万6600ドル付近から反発しており、流出に対抗する買い手が存在することを示している。12月後半を通じて、こうした買いは8万6000ドル台半ばで繰り返し確認された。
ビットコインドミナンスは、暗号資産市場全体の時価総額に占めるビットコインの割合を示す。この比率が上昇している場合、資金がアルトコインよりもビットコインに集中していることを意味する。一方、低下する場合は、よりリスクの高いアルトコインに資金が向かっていることが多い。
TradingViewのチャートによると、ビットコインドミナンスは過去1カ月で上昇傾向にある。11月26日の58.50%から、執筆時点では59.66%まで上昇しており、アルトコインからビットコインへの安定した資金移動が確認できる。

市場参加者は、リスク回避局面ではまずビットコインに資金を移す傾向がある。年末休暇で市場流動性が低下する時期には、その動きが一段と強まる。
このため、ETFの資金フローがマイナスで推移する中でも、ビットコインが過去1カ月にわたり8万5000ドルのサポートを維持できた理由が説明できる。
12月30日のCoinglassのデリバティブデータも、今回の反発が「レバレッジ主導」ではなく「現物主導」であることを示している。デリバティブの総取引高は30.59%減の663億4000万ドルに低下し、建玉(オープンインタレスト)も1.85%減の566億ドルとなった。オプション取引高も35.46%減の22億4000万ドルに落ち込み、投機的な取引が後退していることがわかる。
ロング/ショート比率は0.99と、ほぼ中立水準だった。これは、数日間続いた弱気優勢のポジションが解消され、持ち高が均衡状態に戻ったことを示している。
取引高が減少する一方で、建玉の減少が限定的であることは、新たな過剰レバレッジが積み上がっていないことを意味する。レバレッジ主導の上昇は、資金調達環境が変化すると急反転しやすいが、現物主導でじりじりと上昇する局面は、ビットコインドミナンスが上昇している環境では持続性が高い。
価格が8万8000ドル台半ばを維持したまま推移すれば、9万ドルを明確に突破する局面では、様子見を続けていた投資家が2026年を前にポジションの見直しを迫られる可能性がある。
ただし、ETFの資金フローは依然として大きなリスク要因であり、再び大規模な資金流出が起これば、上抜けの試みが妨げられる可能性も残っている。