暗号資産市場が回復しセクターが200億ドルに迫る中、マスターカードがAI決済を開始【価格分析】

●マスターカードは東南アジア全域でAIを活用した決済のパイロット版(実証実験)を開始し、エージェンティック・コマース(エージェント主導型商取引)の普及を加速させている。

●Foresight Ventures(フォーサイト・ベンチャーズ)は、2026年をAI決済が本番環境のインフラストラクチャへと移行する転換点として位置付けている。

●水曜日、米国とイランの停戦の可能性が高まり世界の金融市場を押し上げたことを背景に、AI関連の暗号資産(仮想通貨)トークンが急反発し、同セクターの評価額は200億ドルへと押し上げられた。

マスターカード、東南アジアでAI決済のパイロット版を展開

4月8日、マスターカードはシンガポールとマレーシアでAIを活用した決済プロダクトのパイロット運用を開始し、エージェンティック・コマースの商業化に向けた決定的な一歩を踏み出した。

このASEANでの展開では、認証済みのAI主導トランザクションが導入され、透明性とコントロールを維持しながら、人工知能エージェントがユーザーに代わって決済を実行できるようになる。

Googleと共同開発された「検証可能なインテント(verifiable intent)」フレームワークは、トークン化された認証情報とパスキーを組み合わせることで、銀行、加盟店、消費者が各トランザクションに対する可視性を共有できるようにするものだ。

このモデルは、AIエージェントがトランザクションを開始した際に、ユーザーが正確に何を承認したかを確認する改ざん耐性のある記録を作成する。

マスターカードの事業拡大には、シンガポールにAIセンター・オブ・エクセレンス(AI Centre of Excellence)を設立し、イノベーション、サイバーセキュリティ、AIの各部門を単一の拠点に統合する計画も含まれている。

このパイロット運用はUnited Overseas Bank(UOB:大華銀行)とのパートナーシップにより実行されており、同行のASEANネットワークを活用して複数の管轄区域にわたる相互運用性のテストを行っている。

Foresight Ventures、2026年にAI決済が実験段階から本格的な普及へと移行すると予測

シンガポールを拠点とする暗号資産ベンチャーキャピタルであるForesight Venturesの最新の業界レポートは、AI主導のコマースが2026年に本格的な成長を遂げる態勢が整っていると論じてる。

「エージェンティック・コマースの現状(State of Agentic Commerce)」レポートでは、わずか半年間のうちに、世界の主要プレイヤーがいかにしてパイロット版のコンセプトから本番インフラへと移行したかが強調されている。

同レポートによると、米国最大の取引所であるCoinbaseはx402プロトコルを通じて1,500万件以上のAIトランザクションを処理し、StripeはM2M(マシンツーマシン)決済をメインネットへと進展させた。

さらなる成長の可能性の大きさを強調するように、Microsoftは2028年までに10億以上のAIエージェントが稼働する可能性があると予測している。

Foresightは、エコシステムを形成する2つの明確なレイヤーを特定している。オーケストレーション・レイヤーはAIエージェントがどのようにトランザクションを発見し開始するかを管理し、セトルメント(決済/清算)・レイヤーは価値がどのように移転されるかを決定する。

<エージェンティック・エコノミーの2つのレイヤー | 出典:Foresight Venture、2026年4月8日>

イーサリアム財団(Ethereum Foundation)やその他のブロックチェーン開発者によるプロトコルは、特にエージェント間のやり取りにおけるトラストレス(第三者の信用を必要としない)な決済を可能にすることに、ますます重点を置いている。

<ERC-8183 / ERC-8004 – トラストレス・エスクロー | 出典:Foresight Ventures>

このような進展にもかかわらず、フラグメンテーション(断片化)が依然として決定的な課題となっている。

現在、地域やプラットフォームを越えてオーケストレーションとセトルメントのシステムを結びつける統一規格は存在しない。

同レポートは、複数のレール(決済網)にまたがって決済をルーティングできるインフラストラクチャが構造的な優位性を持つ「セトルメント・レイヤー」において、長期的な支配権が生まれる可能性が高いと結論付けている。

AI暗号資産セクター、市場の反発と規制の足音により200億ドルに迫る

4月8日の水曜日、米国とイランの停戦の呼びかけが世界の金融市場を押し上げたことで、暗号資産のAIトークンに過熱気味の需要が見られた。

CoinMarketCapのデータによると、AIおよびビッグデータトークンのセクターは5.5%の上昇を見せて評価額178.9億ドルに達し、暗号資産市場全体の時価総額の上昇率(4%)を上回った。

<暗号資産のAI・ビッグデータトークンのトップ5が4月8日に2桁の上昇を記録 | 出典:Coinmarketcap>

同セクターの取引高が30億ドルを突破する中、ランキング上位5資産であるBittensor、Render、Internet Computer、NEAR Protocolはすべて日中10%を超える上昇を記録した。これは、投資家のリスク選好度が回復し、暗号資産AIトークンに多額の資金が投じられたことを反映している。

今後を見据えると、規制の不透明さは依然として重要な下押し要因となっている。

米国では、AI安全性法案により、より厳格なリスク管理と、分散型AIモデルの監査可能性が求められている。

米国最大級の決済プロバイダーの1つであるマスターカードによるシンガポールでのパイロット運用のような現実世界の金融アプリケーションは、この法制化を加速させる可能性がある。

<米国は2027年までにAI安全性法案を制定するか | 出典:Polymarket>

4月8日時点で、米国が2027年までにAI安全性法案を制定するかどうかを追跡する予測市場データは、Polymarketにおいて33%の確率を示しており、3月22日頃の60%から低下した。

この大きな変動は、包括的な法律を成立させるために必要なタイミングと政治的合意の形成について、依然としてかなりの不確実性が存在することを示唆している。

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