最近、NADA NEWSでは、円建てステーブルコイン「JPYSC」の記事が、改めて読まれている。2月末に公開した、SBIホールディングスとStartale Groupによる円ステーブルコイン構想の記事だ。
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背景にはSNS上での議論の高まりがあるようだが、それだけでは説明しきれない関心の強さを感じる。円ステーブルコインをめぐる議論が、ひとつ次のフェーズに入りつつあるのかもしれない。
議論の焦点のひとつは、先行する「JPYC」と、SBIが発表した「JPYSC」の関係だろう。「競合になるのか」という問いだ。
確かに、その見方は間違ってはいない。円ステーブルコインとして、どちらが主流になるのかは、当然ながら注目される。
似ているのは名前、違うのは役割
JPYCとJPYSC。一文字違いで、ロゴも似ている。だが両者は設計思想も立ち位置も異なる。
JPYCは現状、資金移動型のスキームで発行されている。JPYCという名称は、JPY(日本円)とCoinの頭文字のCの組み合わせだが、Consumer(コンシューマー)のCも思い浮かぶ。考えすぎだろうか。
一方のJPYSCは、信託型という枠組みで発行され、機関投資家と国際決済での利用を目指している。
ちなみに、JPYCもビジネスシーンでの利用促進を目指し、またJPYC(信託型)の発行も目指しているが、ここではその話は一旦、置いておく。
競合ではなく、立ち位置の違い
つまり、両者は同じ土俵に立っているわけではない。
実際、SBIグループを率いる北尾氏は、NADA NEWSとのインタビューの中で、JPYCの支援も考え得るとも語っており、単純な対立構造ではないことを感じさせた。
JPYCとJPYSCは、名前が似ているだけでなく、「日本円をオンチェーン化する」という同じ方向を向いている。
であれば、競合ではなく、棲み分けという流れの中で、“兄弟”のような関係になる可能性もあり得る。もちろん、世の中、中の良い兄弟ばかりではないが。
もうひとつの動き──三菱商事とドル送金
ここで、もうひとつ気になる動きがある。
三菱商事が、2026年度にも、JPモルガンのブロックチェーン基盤を活用し、ドル建ての国際送金を開始する方向で検討しているという報道だ。
当初は、ブロックチェーンを使ったドル(USD)送金だが、その先には、JPモルガンが展開するトークン化預金の活用も視野に入るだろう。
トークン化預金ならば、単純なドル送金では実現できない、プログラマブルな活用が可能になる。
ステーブルコイン vs トークン化預金
見えてくるのは「ステーブルコイン vs トークン化預金」というもうひとつ大きなレイヤーでの競争軸だ。また日本円かドルか、の議論も絡む。
さらに三菱商事は、3メガバンクによるステーブルコイン共同発行構想との関係も報じられている。グローバル決済への活用だ。
一方で「3メガバンク・ステーブルコイン」については、三井住友フィナンシャルグループの磯和啓雄氏がイベントで「遅々として進んでいる」と語っている。
三菱商事とJPモルガンとの取り組みは、実際には以前から進んでいたのだろうが、外から見ると、三菱商事が独自の選択に踏み出したようにも見える。
いや、むしろ、グローバル規模でビジネスを展開する企業として、CMS(キャッシュマネジメントシステム)への利用など、広く「デジタル通貨」の活用方法を模索していると見るべきか。
JPYCか、JPYSCか。あるいはステーブルコインか、トークン化預金か。日本円建てか、ドル建てか──。期せずして、連携したテーマのコラムを、2日連続で公開することになった。
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誰が決済インフラを握るのか。どのネットワークが使われるのか。その選択が、デジタル通貨の使われ方さえ規定していく。競争は、すでに始まっている。
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