コインチェックは3月12日、暗号資産取引サービス「Coincheck」で開設された法人口座数が1万件を突破したと発表した。同社は、暗号資産(仮想通貨)を財務戦略の一環として保有・運用する「クリプト・トレジャリー」に取り組む企業の増加をその背景として挙げている。
NADA NEWSではこの発表を受け、1万口座の内訳や直近のトレンド、また法人参入のハードルとされていた「期末時価評価課税の適用除外」が口座開設に与えた実際のインパクトなどについて、同社事業開発部に書面取材を実施した。
以下に、同社からの回答全文を掲載する。
【コインチェック取材回答全文】
回答者: コインチェック株式会社 経営戦略本部事業開発部 副部長 美馬友輝氏
※事業開発部は事業会社および機関投資家向けサービス「Coincheck Prime」をはじめ法人顧客の窓口および関連業務を担当。
Q1. 法人口座の属性・トレンドについて
具体的にどのような業種(IT、不動産、製造業など)や企業規模(上場企業か中堅・中小か)の口座開設が直近で目立っているのか。
A.
●企業規模について: 当社のKYC済み法人ユーザー全体で見ると非上場の中小企業が大多数です。法人の口座開設が大きく盛り上がったのは、2018年頃および2020〜21年頃の暗号資産の相場の盛り上がりのタイミングでした。
●業種について: 2025年3月のCoincheck Prime開始以降では情報通信業、いわゆるIT企業の登録・口座開設が業種別で見るともっとも多くなっています。
●当社法人ユーザーは中小規模のオーナー経営の法人が大多数を占めます。業種はさまざまですが建設系や医療系などで余裕資金の一部を財務・運用観点で暗号資産に預け入れたいというニーズです。
●一般にDATやクリプトトレジャリーと呼ばれる上場企業が誕生し、過去に比べこの1年は上場企業のご利用も増加傾向にあります。
●25年3月末の国内暗号資産法人口座数は4万5198口座(前年同期比12%増、同4890口座増、出所「暗号資産取引についての年間報告 2024年度(2024年4月〜2025年3月)」P.23)。前期と同じ増加率で法人口座数が伸びていると仮定すると、足元は5万強の口座数になっているものと推測されます。当社の現在の法人口座数シェアは2割程度と推測しています。個人同様に多くの法人のお客様にもご利用いただいています。

●同資料によると25年3月末の設定口座数全体1221万7110口座に占める法人口座数は4万5198、わずか0.4%であり、業界全体としても法人口座の開設はまだまだこれからの状況と見ています。
Q2. クリプト・トレジャリーの具体像
現在はビットコイン(BTC)の長期保有と、イーサリアム(ETH)等の運用、どちらのニーズが主流となっているか。また、他のコインでの運用というのも拡がっているのか。
A.
BTC、次いでETHという状況です。上場企業の関心としては、どのように安全に保管するかという点が第一にありますが、加えて、単なる保有に留まらずどのように運用するか、という点が増加しています。
Q3. 「Coincheckアセットロック」のインパクト
期末含み益課税の課題をクリアできることがサービスの強みと認識している。実際にこの機能やサポートの存在が、今回の法人1万口座突破に与えたインパクトはどの程度と分析しているか。
A.
当社は24年5月に(Coincheckアセットロックの)提供開始。期末時価評価課税の適用除外サービスであり、保有する暗号資産に含み益が生じている場合にメリットがあります。相場上昇時に決算期末を迎える場合に問い合わせや利用申込が多く、下落時には引き合いが減少する傾向にあります。
ゆえに2025年9月頃は問い合わせが多かったのですが、足元2026年3月決算の企業からの相対的に問い合わせは少ない状況です。
アセットロックは当社への問い合わせの一定のフックになってはいるが、法人口座数全体の押し上げになるほどではないと受け止めています。
Q4. 1万口座到達のペースと内訳
過去数年間でどのタイミングで最も口座開設が加速したのか。また、1000万円以上を対象とする「Coincheck Prime」層と、それ以下の層の比率を教えてください。
A.
法人の口座開設「数」では2018年、2020-21年の相場上昇トレンドのタイミングのほうが波は大きかったです。
足元1年は開設数の波は過去の相場上昇期ほどではありませんが、質問1でも回答したように、社数は少ないが上場企業が暗号資産を保有するケースが増えるなど、過去には見られなかったトレンドが出てきています。
Coincheck Primeの法人顧客数は法人ユーザー全体から見ると割合は小さいですが、残高全体に対するシェアではその割合は大きく逆転します。
【NADA NEWS編集部 考察】
今回の取材回答からは、法人口座「1万件」という数字の背景にある、国内の法人向け暗号資産市場の変化が読み取れる。
まず、法人参入のハードルとされてきた税制や規制の整備が与えた影響についてだ。近年は期末時価評価課税の適用除外など、法人にとっての環境が整ってきている。
しかし興味深いことに、口座開設の波そのものは2018年や2020〜21年といった過去の相場上昇トレンド時の方が大きかったという。
同社によれば、アセットロック機能は問い合わせのきっかけにはなるものの、口座数全体を大きく押し上げる要因にはなっていない。
制度が整ったからといって自動的に法人が動くわけではなく、結局のところ「今の相場環境で保有するメリットがあるか」というシビアな財務判断が、企業を動かす最大の要因になっていることがうかがえる。
また、法人ユーザーの構成と預託残高のバランスも興味深い。
口座数の大半を占めるのは、そうした過去の相場上昇期に参入した層や、建設系・医療系など実業の余剰資金を振り向ける中小企業だという。
一方で、預託残高の多くをけん引しているのは、「Coincheck Prime」を利用する規模の大きい法人層だという。
暗号資産が「一部のIT企業のもの」という枠を超え、中小企業には手堅い資金の預け先として、トレジャリー企業などの大口法人には本格的な財務戦略の手段として、それぞれ異なる目的で定着しつつある様子が見てとれる。
さらに注目したいのは、保有する暗号資産の種類や目的の変化だ。ビットコインの長期保有にとどまらず、イーサリアムなどを活用した「運用」に関心を持つ上場企業が増加している。
これは、暗号資産に対する企業の視点が、単なる値上がり益を狙うものから、ステーキングなどを通じた利回りを追求する金融資産へと明確にシフトしていることを示している。
|取材・文:栃山直樹
|画像:Coincheckウェブサイトから(キャプチャ)
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