不動産から未公開株まで、次なる成長フェーズを迎えたST市場──東京都デジタル証券シンポジウム【JFW 2026】

金融庁が主催する「Japan Fintech Week 2026」の一貫として、東京都は3月5日、有楽町のTokyo Innovation Baseで、「東京都デジタル証券シンポジウム2026」を開催した。今年で3回目となる本シンポジウムでは、デジタル証券市場の最前線で活躍するトップランナーたちが登壇。第一線で活躍するキーパーソンが交わした議論から、市場の現在地と次なる成長フェーズへの展望が浮かび上がった。

ステーブルコインの進展とプレイヤーの多様化

金融庁総合政策局リスク分析総括課長の清水茂氏による基調講演に続き、第1部のパネルディスカッション「トークン化が描く金融の未来」が行われた。N.Avenue/NADA NEWS代表取締役CEOの神本侑季がモデレーターを務め、Progmat(プログマ)代表取締役 Founder and CEOの齊藤達哉氏、オルタナ信託代表取締役社長の池田匠作氏、森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士の石橋誠之氏が登壇した。

Progmatの齊藤氏は、過去1年間の市場の変化について、最もモメンタムが変化したのは米国だと指摘。米国のステーブルコイン関連の動向が、日本の関係者にも強い動機付けになっていると説明した。決済性トークンの実用化が進むことで、証券などのアセットをブロックチェーン上で扱う動きが現実味を帯び、結果としてデジタル証券(セキュリティ・トークン)への注目度が改めて高まっていると語った。

〈Progmat代表取締役 Founder and CEOの齊藤達哉氏〉

また、市場を支えるプレイヤーの多様化も進んでいるという。従来の大手証券会社による対面販売に加え、不動産クラウドファンディング事業者が証券会社機能を取り込み、グループ一体で取り組む動きも見られると説明。さらに、足元の金利環境の変化を背景に、これまで組成が難しかった株式など新たなアセットの案件も出始めていると述べた。

「一気通貫」でST組成期間を短縮

続いて、オルタナ信託の池田氏が、三井物産デジタル・アセットマネジメント(MDM)グループとしての取り組みを紹介。同グループは運用・証券・信託の機能を内製化しており、「一気通貫で証券の組成と発行が可能な体制」を構築。新設したオルタナ信託により、そのモデルが完成したと強調した。

池田氏は、既存の信託プロセスを踏襲せずゼロベースで再設計した結果、従来6〜12カ月を要していた組成期間を1〜2カ月に短縮することに成功したと説明。この点について齊藤氏も、「元信託銀行員の視点から見ても、既存プロセスを追わずにゼロベースで作っていることが最大の強み」だと評価した。

〈オルタナ信託代表取締役社長の池田匠作氏〉

池田氏は、開業から8カ月間で名古屋のオフィス案件やイオンモール案件など4件、約400億円の資産を受託した実績を紹介した。

アセット拡大と“体験価値”の向上

池田氏は今後の展望として、グループ外の運用会社や証券会社にも機能提供を行い、市場の裾野拡大を目指す方針を示した。齊藤氏も「ST事業に参入したいが金融ライセンスがない事業者にとって、非常に強いパートナーになる」と期待を寄せた。 

また池田氏は、投資家からの強いニーズに応えるため、航空機や船舶といった新たなアセットクラスへの展開も具体的に検討していると説明。個人投資家に向けて「自分が投資している航空機がこのあたりを飛んでいる、船舶がこんな荷物を運んでいる」といった、自身の持ち物が活躍している姿を直接見られる仕組みを想定しており、不動産とは異なる新しい投資体験の提供を目指していると語った。

直面する「法整備の壁」

弁護士の石橋氏は、アセットの多様化と取引の高度化に伴う法的課題を指摘した。

〈森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士の石橋誠之氏〉

具体例として、投資信託をトークン化する際に、現行の投信法では「券面(紙)発行」を前提にしている点や非上場株のトークン化における譲渡制限の複雑さを挙げた。また、パーミッションレスのパブリックチェーンを活用して取引を高度化する際のKYC(本人確認)や税制面の課題についても言及した。 

齊藤氏は事業者側としても「切実な課題」だと前置きしつつ、「短期的には、投資信託における券面の不発行を認めてもらうだけでも業界は大きく前進する」と指摘。そのうえで、長期的には「ブロックチェーン上のトークン移転のみで第三者対抗要件を満たすような、根本的な法整理が望まれる」と語った。

地方債ST、「第1号は東京都で」

パネルディスカッション第2部では、「『アセットの多様化とデジタル通貨の活用』がもたらす新市場」と題し、BOOSTRY 代表取締役CEOの平井数磨氏、東京海上アセットマネジメントビジネス戦略部開発グループ部長の角井浩司氏、ディーカレットDCP取締役副社長執行役員COOの平子惠生氏が登壇。日本セキュリティトークン協会代表理事の増田剛氏がモデレーターを務め、多様なアセットの登場や決済インフラの進化が今後の市場拡大に与える影響について意見を交わした。

〈左から、BOOSTRYの平井数磨氏、東京海上アセットマネジメントの角井浩司氏、ディーカレットDCPの平子惠生氏〉

BOOSTRYの平井氏は、現状で約3000億円規模に拡大したST発行規模をさらに発展させるには、不動産以外の対象商品の多様化とステークホルダーの拡大が不可欠だと指摘。今後のポテンシャルとして「国内の上場株式の時価総額1100兆円や国債の1100兆円といった既存市場の1%でもトークン化されれば、景色は一変する」と語った。

東京海上アセットマネジメントの角井氏は、プライベート・エクイティ(未公開企業投資)ファンドのST化事例を解説。一口100万円で約100社の未公開企業に分散投資できる画期性を強調する一方、新しい商品性を個人投資家へ適切に説明する難しさにも言及し、今後は換金性を高める二次流通の整備がSTのメリットを活かす鍵になると指摘した。

ディーカレットDCPの平子氏は、トークン化預金「DCJPY」を用いた証券引渡と資金決済(DVP)の完全自動化により、決済リスクを低減できる点を強調。セッション終盤には、地方債のST化を見据え、会場にいた東京都の担当者に向けて「第1号案件は、ぜひ東京都で実現してほしい」と呼びかける一幕もあり、会場からは拍手が起こった。

|文・写真:NADA NEWS編集部

PR

ボーナスで始めるのにおすすめな国内暗号資産取引所3選

取引所名特徴

Coincheck
500円の少額投資から試せる!】
国内の暗号資産アプリダウンロード数.No1
銘柄数も最大級 、手数料も安い
無料で口座開設する

bitbank
【たくさんの銘柄で取引する人向け】
◆40種類以上の銘柄を用意
◆1万円以上の入金で現金1,000円獲得
無料で口座開設する

bitFlyer
初心者にもおすすめ】
◆国内最大級の取引量
◆トップレベルのセキュリティ意識を持つ
無料で口座開設する
Sponsored
「価値の流れは、必ず変わる」大手コンサルからWeb3へ──HashPort吉田世博氏が見据える次の金融インフラの姿とは
ブロックチェーンは「価値の流れ」をどう書き換えるのか。万博デジタルウォレットを手掛ける吉田氏が語る、2026年の金融インフラ。
提供:インベスコ・アセット・マネジメント株式会社