NADA NEWSを運営するN.Avenueは、Web3をリサーチ・推進する企業リーダーを中心とした、国内最大の法人会員制Web3ビジネスコミュニティ「N.Avenue club」を2023年に始め、継続的に活動している。
そのN.Avenue clubは毎年1回、会員企業が自社の取り組みや事業内容を発表する「N.Avenue club Summit」を開催しており、今年は3月19日に行われた。会場では、全11の企業・団体がプレゼンテーション。そのうち金融機関などを中心にした4社のピッチについてはPart1で紹介した。
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今回、Part2として、エンターテインメント領域の企業や大使館を含む5団体についてレポートする。
なおN.Avenue club Summitでは、企業ピッチのほかスペシャルセッションが行われ、自由民主党の平将明衆議院議員、Startale Group CEO・渡辺創太氏、株式会社メルコイン代表取締役CEOの中村奎太氏が鼎談した。
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⑤東急不動産HD株式会社:リアル資産の流動化とセカンダリー市場の創出
後半、最初に登壇したのは、東急不動産HD株式会社CX・イノベーション推進部の岸野麻衣子氏。同社グループでは2022年から、「Niseko Powder TOKEN 」という NFT を販売してきた実績を持つ。

岸野氏によれば、ホテルやレジャー業界は、キャッシュ確保までのタイムラグや、高いキャンセル率による空室リスクといったボラティリティの高い構造的課題を抱えているという。同社はこれらの課題を解決するため、レジャーのセカンダリー市場の立ち上げを目指している。
具体的には、グループ会社が運営するホテル・東急ステイの日付確定型宿泊券をNFT化し、ユーザーがワンクリックで二次流通できる仕組みを構築し「東急ステイ公式宿泊権リセールサービス」として2026年1月にリリース。NFTチケットを持っていることで現地のチェックインもQRコードで完結し、キャンセル時にはユーザーに転売利益が入る可能性を持たせたという。

今後はゴルフ場やスキー場の会員権などへも応用してユースケースを生み、現物資産をいかにオンチェーンで使いやすく流動化させるかに注力していく構えだ。
⑥スカパーJSAT株式会社:IP×web3による新しいエンタメ体験
スカパーJSATメディア事業部門 新領域事業部の佐藤一軌氏は、メディア事業の収益力向上を目指し、自社IPの強化や、ブロックチェーンを活用した事業開発などを進めている現状を語った。

同社は、エンタメ体験をブロックチェーンに記録しデジタルアイテムを販売する「スカパー!投票」というプロダクトを2023年12月に開始し、自社運用している。このサービスを拡大するため、アイドルグループ・WHITE SCORPIONの各種イベントにおける共同取組や、キャラクター・教育番組等のイベントにおいては、ローソンチケットNFTを活用したチケット販売を実施したという。

キャラクター・教育番組との取組では、結果として、チケット購入者の7〜8割がNFTを”ついで購入”するなど、リアルイベントとweb3の掛け合わせによって確実なマネタイズを実現している事例を紹介し、IPホルダーとの協業を強く呼び掛けていた。
⑦BIPROGY株式会社:断片的な顧客データを統合し、「オンチェーン上で商流を作る」
BIPROGYのプロダクトマネージメント部web3アーキテクト、牧野友紀氏は同社の取り組みについて、「金融ではなく、オンチェーン上で商流を作ることに愚直に取り組んでいる」と切り出した。

同社が着目するのは、BtoC事業者が抱えるマーケティングの根本的な課題だ。少子高齢化や生活者の多様化によって従来のマスマーケティングが効かなくなり、企業はLTV(顧客生涯価値)の向上へと大きく舵を切っている。
しかし、イベントやキャンペーンで顧客の獲得は進んでいるものの、データが分断されたままであるため、長年の顧客でさえ断片的にしか把握できず、「本当の顧客像」は見えていないという。
この課題をWeb3で解決するのが同社のアプローチ。顧客がWeb3ウォレットを通じて複数のトークンを保有することで、顧客が属するコミュニティや共通の関心事(界隈)が可視化される。同社はこれまで2〜3年にわたりこの取り組みを続けており、具体的な実績として、フェンシング協会との実証、そごう・西武などアパレル・リテール領域の分析、 JRの関連会社が実施するスタンプラリーなどのイベント分析を紹介した。

牧野氏は、「いよいよお客様が立体的に見える世界が来ている」などと手ごたえを語っていた。
⑧株式会社CAC:アバランチ、ソラナを中心とした「基盤選定コンサル事業の強化」
創業60周年を迎えるSIerであるCACのブロックチェーン推進グループ・高橋祐貴氏は、技術基盤の選定から開発までを担う同社の戦略を語った。

同社はプライベートブロックチェーンで10年ほどの取り組み実績があり、昨年からはパブリックブロックチェーンのコンサルティングから開発まで領域を広げている。これまでアバランチとソラナの2つを特に重視してきたが、今年から基盤選定コンサル事業の拡充の一貫として、新たに「Base(ベース)」を第3の主軸チェーンとして加えたという。
その最大の理由として高橋氏が挙げたのが、AIエージェントの存在だ。AIエージェントの領域において、Base上のトランザクションボリュームが圧倒的に伸びており、もはや無視できない規模になっているという。

また、エコシステムへの貢献にも積極的だ。JPYCのアイデアソンへの協賛やブロックチェーンハッカソンへの審査員参加に加え、アバランチの開発元と過去3回にわたり共同勉強会を開催。高橋氏自身もソラナ財団に所属しており、日本でのソラナブートキャンプ立ち上げに関わるなど、コミュニティに深く入り込んでいることも紹介した。
⑨スイス大使館 投資局:国家レベルでWeb3企業を誘致する「クリプト・ネーション」の魅力
ピッチのトリを務めたのが、在日スイス大使館のスイスビジネスハブ投資促進部長、松田俊宏氏だ。松田氏はスイス企業の日本進出と、日本企業のスイス進出の双方を支援していると説明した。

スイスの有望産業といえば、ロシュやノバルティスなどを擁するライフサイエンス・製薬分野や、UBSなどをはじめとした金融業が挙げられる。特に銀行業とそれに付随するシステム提供が盛んであり、その流れからブロックチェーン領域にも国を挙げて注力してきた背景があるという。
スイスがブロックチェーンと高い親和性を持つ理由について、松田氏は「国の成り立ち自体が非常にディセントラライズド(分散型)なこと」と解説。スイスには26の州が存在し、米国のように各州が独立しているという。

また、イーサリアム財団やソラナ財団、カルダノ財団などが拠点を置くツーク州(クリプトバレー)では、国税の8%に州税を3〜4%乗せるのみで、実効税率を12%以下に抑えるといった強力なクリプト企業誘致体制も整えているそうだ。
日本企業の進出・成功事例として、野村証券のLaser Digital、NEC、ファンプラの事例を紹介。次なる成功事例を創出すべく、6月23日から25日にかけてスイスで開催される「Point Zero Forum(ポイントゼロフォーラム)」への参加を求めていた。
アドバイザリーボードからのフィードバック
後半のピッチに対しても、アドバイザリーボードのメンバーがコメント。社会実装の壁や、それを乗り越えるための具体的なアプローチなどについて意見を述べた。
増田雅史氏 森・濱田松本法律事務所 外国法共同事業パートナー弁護士
「非金融領域では『一体、何が売り物になるのか』という視点から発想が広がっており、大変心強い。その時、国内外を分けて考えたほうがいいでしょう。マスに売るにはハードルが高くなります。マスアダプションには7つハードルがあるといわれますが、それも要約すると『使いたいものか』と『使いやすいか』という2つに分けられます。協業の可能性があるのは後者のほうではないでしょうか。たとえば自社でUIをゼロから構築するのは難しいため、既に顧客接点を持つLINEのようなアプリと組み、Web3を感じさせないよう工夫することです。これは国内の話で、海外展開については、どうリーチするかが難しいところです。金融インフラが米国の厳しい法規制を回避するために、米国外(グローバル向け)に発展していく流れがありますが、日本の規制をある種、スキップできるような金融インフラが出てくるのではないでしょうか。そうしたインフラと親和性が高い、デジタルコンテンツなどをオンチェーン決済と結びつけてグローバルインフラに乗せるといったように、国内とはまったく違う発想での海外展開が可能になるでしょう」
中村奎太氏 株式会社メルコイン代表取締役CEO
「非金融のコンテンツ流通において一番の課題は『スケールしづらいこと』です。トークン化してコンテンツを作るにはコストがかかり、それをサステナブルに続けるのは非常に大変で、どうやって効率化しながらやっていくかは課題です。少ないコンテンツでも高頻度で顧客ニーズをキャッチし、プラットフォーム的なアプローチで流動化していく必要があります。コンテンツを生み続けるのは難しいので、既にあるものの活用、一度生んだものの効率的な活用が必要でしょう。国内と国外でギャップはあるものの、日本でうまくやりながらも海外でもスケールする仕組みが必要です。テクノロジーもガバナンスにおいても。いろんな分野のプロが集まって議論することが求められるので、この(N.Avenue clubの)ような機会は重要ではないでしょうか」

斎藤創氏 創・佐藤法律事務所 代表弁護士
「Web3で流行るためには『すごい儲かるか』『すごい楽しいか』のどちらかがないと難しいと感じています。BtoBの領域ではコスト削減などのメリットがありますが、IPを活用しようとした際、既存の強いIPを持つ企業はなかなかWeb3領域に出したがらないという現実的な課題があります。ブロックチェーンゲームのときもそういうことがありました。IPホルダーが、強いIPを出してくれないわけです。アイドル×NFTでも、あまり有名でないアイドルや歌手の話しか出てこなかった。日本には強力なIPが多数存在しますが、それらをいかにエコシステムに取り込み、ユーザーが本当に欲しがるような体験を創出できるかが問われています。法的な課題も含め、専門家としてアドバイスし協力していきたいと考えています」
成本治男氏 TMI総合法律事務所 パートナー弁護士
「海外、たとえばシンガポールの事例を見ても、本当にマスアダプションに至っているユースケースはまだ少ないのが現状です。政府主導のプロジェクトはあっても、BtoBや個人レベルでステーブルコイン決済が常識になっているわけではありません。しかし、Grabのアプリにウォレットが入り、為替を気にせずステーブルコインで旅行先で決済できるなど、少しずつ変化は起きています。顧客基盤と販売チャネルを持っているところは重要なアセットです。日本においては、不動産のセキュリティトークンを個人のリテール向けに販売できていて、これは世界的に見てもすごいことです。今後は、宿泊権がついてくるような『推し活』要素を含んだ金融商品などが可能性があるのではないでしょうか。いずれにせよ、日本独自のアセットと人口と金融資産の大きさは、日本の見逃せない価値です。これらを活かしたアプローチが重要になります。同時に、グローバル展開においては現地のローカライズに加え、AI投資機能の組み込みなど、まったく新しい魅力を提供する努力が求められるでしょう」

|文:瑞澤 圭
|編集:NADA NEWS編集部
|写真:多田圭佑
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