家賃決済、証券、国際送金──広がる金融オンチェーン化の実装事例【N.Avenue club Summit企業発表会 Part1】

年に1回、Web3やブロックチェーン領域の最前線を走る企業が集結し、コミュニティ内の共創を促進するイベント「N.Avenue club Summit」が3月19日、開催された。

このイベントの主催は、NADA NEWSを運営する当社N.Avenueが2023年7月に開始した「N.Avenue club」。Web3をリサーチ・推進する企業リーダーを中心とした、国内最大の法人会員制Web3ビジネスコミュニティである。

今回は、「N.Avenue club Summit」で自社の取り組みや事業内容を発表した11の法人会員企業・団体の様子のうち、前半の内容をPart1としてお届けする。日本の金融インフラを根本からアップデートしようと試みる企業群によるピッチと、業界をけん引するN.Avenue clubアドバイザリーボードらによるフィードバックの内容をまとめた。

なおこの日には、企業によるピッチに先立つスペシャルセッションで、自由民主党の平将明衆議院議員(前デジタル大臣、初代サイバー安全保障担当大臣)、Startale Group CEO・渡辺創太氏、株式会社メルコイン代表取締役CEOの中村奎太氏による鼎談「AI×トークナイゼーションで激変する、国家とビジネス環境」も行われた。スペシャルセッションの様子も別途レポートしている。

▶関連記事:AIと交差する「オンチェーン金融」の衝撃──平議員、スターテイル渡辺氏、メルコイン中村氏が世界的潮流と日本の未来を議論【N.Avenue club Summit】

 ①株式会社ディーカレットDCP:トークン化預金とグローバル決済網の構築

先陣を切ったディーカレットDCPからは、営業戦略本部の福家康文副本部長と、金籠舞氏が登壇してプレゼンした。

同社は資金決済法上の電子決済手段に該当する一般的なステーブルコインとは異なり、銀行預金をそのまま電子上の記録とする「トークン化預金」の発行に取り組んでいる。

同社のプラットフォームの特徴は、銀行がトークン化預金を発行する「フィナンシャルゾーン」と、それを様々なユースケースに適用する「ビジネスゾーン」の2層構造となっていること。これにより、複数の銀行間を跨いだインターオペラビリティ(相互運用性)を担保しているという。

具体的なユースケースとして、賃貸不動産の家賃収納での活用を推進。不動産管理会社の収納データをオンチェーンに乗せ、家賃の自動収納を実現する仕組みを年内にもローンチ予定だ。

グローバル展開も進めており、2つの事例が紹介された。一つは、銀行間でのクロスボーダー・マルチカレンシー決済において、オンチェーンレッジャーによりリアルタイム決済を実現するPartior(パルティオ)と提携し、日本の銀行が同ネットワークに接続するハブの役割を担うというもの。もう一方は、トークン化アセットのグローバルリーダーであるOndo Finance(オンドファイナンス)と提携し、トークン化アセットを24時間365日リアルタイムで決済できるレールの提供を目指すというものだ。

株式会社大和証券グループ本社:金融資産のオンチェーン化へ

大和証券グループ本社からは、経営企画部デジタルアセット推進室の横山尚弘氏が登壇。急成長するセキュリティトークン(ST)領域について報告した。

不動産STは発行開始から約5年で3000億円規模の市場に成長しており、同社は2025年度に、大阪のホテル案件など300億円規模の大型案件を含む4件の不動産STを組成したと紹介した。

次なる目標として「金融のオンチェーン化」を掲げた。同社は金融庁のFinTech実証実験ハブの支援を受け、野村證券や3メガバンクと協力しながら、証券会社内にある誰が株式等を持っているかが記載された「振替口座簿」とブロックチェーンを同期させる実験などに取り組んでいるという。

そして横山氏は、株式や投資信託といった伝統的な有価証券市場をいかにオンチェーン化していくかが、今後の最大のテーマであると語った。

③株式会社BOOSTRY:既存金融とブロックチェーンをつなぐハブインフラ

野村ホールディングス、野村総合研究所、SBIホールディングス、日本取引所グループが出資するジョイントベンチャー・BOOSTRYのBizDev北野元仁氏は、ITベンダーの視点からピッチを行った。

北野氏は、セキュリティトークンはあくまで「有価証券」を裏付けとしているため、金融機関の既存のシステムに乗せて管理する必要があると説明。BOOSTRYは、この既存システムとブロックチェーンレイヤーの間に生じる課題を解決するハブとなるシステムを、大手金融機関を中心に提供しているという。

ただ同社はシステム提供にとどまらず、国内有数のコンソーシアム型ブロックチェーン「ibet for Fin」の開発も主導しているといい、市場が成熟する中、今後はステーブルコインとの連動や株式・国債のトークン化など、市場はさらに面白くなっていくとの期待を示した。

④株式会社電通総研:英国発のプログラマブル決済を日本へ

前半の最後を飾ったのは電通総研。金融IT本部グローバルソリューションユニット、梅尾衝平氏は、決済領域における「プログラマブル決済」の追求をテーマに掲げた。

同社は今年の1月、英国の主要銀行(バークレイズ、HSBCなど)によるトークン化預金の実証実験(GBTD、Great Britain Tokenized Deposit)のインフラを提供しているQuant Network社と業務提携を結んだという。プログラマブルなデジタルマネーの採用と、決済基盤の刷新支援において協力すると発表されている。

梅尾氏は、10年にわたり大手町で「FINOLAB」を運営しスタートアップと協業してきた地盤と、日銀決済システムや事業法人向けトレジャリーシステムの構築実績を活かしていくと抱負を述べ、「プログラマブル決済によって即時性、低コスト、透明性などが実現できる。次世代インフラとして皆さんと一緒に作っていきたい」などと呼び掛けていた。

アドバイザリーボードからのフィードバック

前半のピッチを受け、業界を熟知するN.Avenue clubアドバイザリーボードのメンバーから、戦略的かつ実践的なコメントが寄せられた。

白石陽介氏  JCBA副会長・株式会社MZ Cryptos 代表取締役

「トークン化預金とパブリックチェーン上のステーブルコインは、機能は似ていても思想やアーキテクチャがまったく異なります。日本法に準拠し、既存金融機関が発行するトークン化預金は、ローカルな規制が強いため、まずは日本国内をターゲットに実績を作ることが現実的でしょう。また、ステーブルコインの法制化の過程では『ユースケースは何なのか』と常に問われ続けてきました。ユースケースが出てきてユーザーが動くことで、初めて規制が緩和されビジネスがしやすくなります。まずはPoCを出してしっかりビジネスにつなげることが王道です」

リー・エイドリアン氏 Ethereum Foundation

「海外の視点から見ると、日本においてはリテール(個人向け)やDeFiよりも、BtoB(法人向け)のユースケースに最もポテンシャルがあると感じています。法人間の決済や海外送金においてこそ、ブロックチェーンの力が発揮されます。また、グローバルで展開するためにはスタンダード(標準規格)やレギュレーションが極めて重要です。米国での法整備も進む中、イーサリアムの標準規格(ERC)と既存金融のISO標準などをどう擦り合わせていくか、世界中の銀行が非常に関心を持って取り組んでいます」

福井崇人氏 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士

「日本の法規制において、暗号資産、電子決済手段(ステーブルコイン)、預金トークン、セキュリティトークンはそれぞれ異なる課題を抱えています。たとえば、資金決済法上の電子決済手段は利息がつけられない一方、預金トークンは銀行預金なので利息がつけられるといった実務的な論点があります。これらを完全にパブリックチェーンで進めることは金融庁の規制環境を考えると難しく、一定のコントロールが効く仕組みが必要です。日本と海外どちらを先にするか、同時に進めるかという話はあるが、日本でやって海外に行くとなると、事業のストラクチャーを後から修正するのは二度手間になる。こうしたことも踏まえ、初期段階から弁護士などのプロフェッショナルに相談することが重要でしょう」

北澤直氏 Eight Roads Ventures Japan ベンチャーパートナー

「金融インフラをグローバルに展開する際、既存インフラの『番人』と対峙するのは非常に困難です。かつてDiem(旧Libra)が失敗したのは、味方をつけずに既存プラットフォームを驚かせ、けんかを売ってしまったからです。クラリティアクトに関する状況を見ても、アメリカでも関係者・金融機関の間で縄張り争いがある。最終的にはPolymarketのように『しれっとユーザーを増やし、ユースケースを作って仲間を作る』しかありません。また、日本の不動産などの『トロフィーアセット』は海外投資家からも強い関心を集めています。こうした資産を活用し、プロフェッショナルの力を借りて海外の流動性をこっそり取り込むようなアプローチも有効だと考えています」

◇◇◇

エンターテインメント領域の企業や大使館を含む5団体についてのレポートは、企業発表会 Part2に続く。

|文:瑞澤 圭
|編集:NADA NEWS編集部
|写真:多田圭佑

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