AIが金融の主体になる時代へ、サナエトークン騒動が示した「技術と信頼」の課題【国際金融システムフォーラム2026】

金融デジタル化の未来とサイバーリスクへの対応をテーマとした「第27回日本国際金融システムフォーラム2026」が19日、都内で行われた。「Japan Fintech Week 2026」と連携しており、暗号資産(仮想通貨)の業界団体であるJCBA(日本暗号資産ビジネス協会)やJVCEA(日本暗号資産等取引業協会)も後援した。

「AI時代の金融のかたち」をテーマにした対談には、HashPort代表取締役CEOの吉田世博氏とJPYC代表取締役の岡部典孝氏が登壇。両者はJCBAの理事も務めており、DeFi(分散型金融)、ステーブルコイン、ウォレットといった要素を軸に意見を交わした。議論の中では、直近で話題となった「SANAE TOKEN(サナエトークン)」の話題にも言及し、会場の注目を集めた。

ステーブルコインが変える金融のあり方

岡部氏はまず、AI時代における金融インフラとしてブロックチェーンとステーブルコインの重要性を強調。従来の金融システムでは接続が難しかったサービス同士も、ステーブルコインを介することでスムーズに連携できるとし、「すでにそうした世界が見え始めており、急速に拡大している」と述べた。

また、ステーブルコインの取引主体にも言及。ステーブルコイン市場では「すでに取引の大半をAIが担っている可能性がある」とし、AI同士が自動で取引を行う構造が現実のものになりつつあるとの認識を示した。

実際、昨年10月から発行が始まったJPYCについても、トランザクションの約95%をAIエージェントが担っていると岡部氏は明かしている。

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そのうえで、日本円と価値が1対1で連動するJPYCの立ち位置ついて、暗号資産と混同されることも多いとし、日本では資金決済法上の「電子決済手段」にあたると説明した。さらに、自己管理型ウォレットで保有できる点にも触れ、「資産を金融機関に預けるのではなく、自ら管理しながら運用できる」ことが大きな特徴だとした。

ウォレットは「ブラウザ」

ノンカストディアルウォレットの提供を手がける吉田氏は、ウォレットとは「インターネットにおけるブラウザのようなもの」だと表現。ブロックチェーンが「価値のインターネット」であるなら、ウォレットはその入口となる存在だという。ユーザーはウォレットを通じて資産を管理し、送受信やDeFiの利用を行う。

日本ではこれまでステーブルコインの流通が限定的だったが、足元では環境が変化しつつある。ウォレットの役割も、単なる保管手段から金融サービスの基盤へと拡張している。

岡部氏は、ステーブルコイン市場の現状について具体的な数値を示した。流通残高は数十兆円規模であり、1日あたりの取引高も10兆円から40兆円程度に達すると指摘。「これほど効率的なお金は今まで存在しなかった」とした。

その背景にあるのが、DeFiを通じた流通だ。

スマートコントラクトによって取引が自動執行されることで、人手を介さず低コストで高速な処理が可能になる。岡部氏はDeFiについて、「歴史上、最も効率的な市場の一つだ」と述べた。

サナエトークンが突きつけた問い

この流れで、議論は高市早苗首相の名前を冠した「サナエトークン」をめぐる騒動にも及んだ。現在ではプロジェクトは中止となっているものの、高市首相本人が自身のXで関与を全面的に否定するなど、波紋が広がった。

吉田氏は一連の騒動について、「DeFiのような仕組みがこうした事象を助長しているのではないかとの見方もある」と問題提起。その一方で、自身は「目的規制論者」だとし、システムではなく、悪用する側を規制すべきだとの考えを示した。

これに対し岡部氏は、DeFiの特性を踏まえたうえで、「パーミッションレスの世界では、誰でもトークンを発行し、自由に取引できる」と指摘。サナエトークンのような事例も、技術的には容易に実現可能であると説明した。

そのうえで市場の実態について「玉石混交」だと述べ、「極端に言えば、99.9%は価値の乏しい『石』になりかねない」と指摘。無秩序なトークンの氾濫が市場全体の信頼性を損なうリスクに言及した。岡部氏もまた、問題の本質は仕組みそのものではなく、信頼の担保にあるとの認識を示した。

「信頼」をどう担保するか

では、こうしたリスクにどう対応していくのが良いのか。

岡部氏は、金融機関の関与による信頼の担保を一つの方向性として挙げた。証券会社などのライセンス事業者が間に入ることで、投資対象の選別やアクセス制御を行い、一定の信頼性を確保するアプローチである。実際に、SMBC日興証券が「DeFiテクノロジー部」を新設するなど、既存金融の参入も始まりつつある。

吉田氏は、暗号資産が金融商品取引法(金商法)の枠組みに組み込まれていく中で、「投資家保護を前提としたルール設計が不可欠になる」と指摘。「技術的に可能だからといって何をしてもよいのかという論点は避けられない」とし、今後の制度設計の重要性を強調した。

こうした動きは民間側でも進みつつあり、吉田氏が代表を務めるHashPortも、オンチェーン金融の実装に向けた取り組みを進めている。この日の前日には、自動マーケットメーカー(AMM)を活用した実証実験で開発面を担当したことを明らかにし、規制事業者が関与する形でDeFiを活用する「DeFi-R」という枠組みを説明している。

パーミッションレスな仕組みを前提としつつも、既存の金融規制や事業者の関与を組み合わせることで、現実的な運用モデルを模索する動きが民間側でも広がり始めている。

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両者の意見は、DeFiという技術そのものを否定することではなく、信頼をいかに担保するかが重要だという点で一致していた。金融機関の関与や制度設計、技術的な透明性をどう組み合わせるかが、次世代の金融基盤を形作る鍵になりそうだ。

|文・写真:橋本祐樹

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