ステーブルコインが減る局面は「押し目待ち」か「市場離脱」か──総供給と取引所残高が示す30日検証ポイント【エックスウィンリサーチ】

● ERC20ステーブルコインの総供給と取引所残高が同時に減少し、短期の買い戻し余力は低下している。
● 資金は市場内待機ではなく償還・法定通貨回帰の可能性があり、需給面では逆風の局面。
● 回復確認には、ステーブル供給の下げ止まりと取引所への純流入再開が必要。

暗号資産市場の資金フローを読む上で、ステーブルコインは主要な流動性指標となる。今回、添付データ(All Stablecoins ERC20)では、①総供給(Total Supply)が高止まり局面から下向きに転じ、直近は約155.2B付近まで低下、②取引所残高(Exchange Reserve)が約67.5B付近まで急低下している。短期の価格変動と同時に「市場内の買い戻し余力」が縮小している可能性を示す。

この2つの低下は、同じ“減少”でも解釈が分かれる。弱気寄りの解釈は、売却後にステーブルとして市場内待機せず、法定通貨へ戻す動きが増えた可能性である。総供給自体が縮む場合、暗号資産エコシステム外へ資本が抜けた(償還・バーン)シナリオと整合しやすい。一方、中立の代替解釈としては、ERC20から他チェーンへのローテーション(例:TRC20等)や、カストディ移動により取引所残高だけが減るケースもあり得る。よって結論は、単一指標ではなく「総供給の下げ止まり」と「チェーン横断の供給推移」を合わせて確認すべき局面となる。

外部市場では、金が高値圏で推移し、他の金属の変動が相対的に大きいという観測もある。これが事実であれば、資本がボラティリティの高い市場から、価値保存色の強い資産へ傾きやすい環境を示唆する。ただし暗号資産側の判断において重要なのは、価格より先に「流動性の戻り」を確認できるかである。

今後30日での検証ポイントは3点に集約できる。第一に、ステーブルコイン総供給が減少トレンドを継続するのか、それとも下げ止まりから再増加へ転じるのか(新規資本の再流入シグナル)。第二に、取引所残高の減少が継続する場合、その内訳が「他チェーン移動」なのか「償還」なのか(ERC20以外の供給・ネットフローで判別)。第三に、価格反発局面で買いが続くかの確認として、取引所へのステーブル純流入と主要資産の現物出来高が同時に改善するかを見る。

現時点の整理としては、ERC20ステーブルの総供給と取引所残高が同時に落ちているため、短期の需給は逆風になりやすい。反面、減少が一巡し供給が下げ止まるなら、次の上昇フェーズの前提条件が整い始めた合図にもなり得る。結論を急がず、「資金の居場所」が市場内へ戻る兆候を、供給・取引所フロー・チェーン横断データで順に確認する局面である。

オンチェーン指標の見方

ERC20ステーブルコインの総供給:暗号資産市場にどれだけの待機資金が存在しているかを示す指標である。この供給が増えている局面では、新規資本の流入やリスク選好の回復が進みやすい。一方で減少が続く場合は、償還や法定通貨回帰が優勢となり、市場全体の流動性は縮小しやすい。

ERC20ステーブルコインの取引所残高:短期的に価格を動かし得る即時流動性の大きさを表す。残高が増加している状態は、買い余力が取引所内に蓄積されていることを意味する。反対に減少局面では、反発力が弱まりやすく、値動きは時間をかけた調整になりやすい。