● 政治リスクを起点に、薄商い時間帯でレバレッジ清算が連鎖。
● OI再拡大局面での整理が、下落を一時的に増幅。
● 焦点は価格ではなく、参加者回帰後の現物吸収。
米国政治を巡る不透明感が、短期的なリスク回避を誘発した可能性がある。米国政府は6日以内に再びシャットダウンに入るリスクが指摘され、予測市場ではその確率が78%まで上昇している。つなぎ予算案を巡る与野党の対立が解けず、政府資金は2026年1月30日に失効予定だ。前回のシャットダウンでは実体経済や市場心理への影響も大きく、こうした政治リスクが再び市場の重石として意識されやすい局面にある。
この環境下で、ビットコインは下落を拡大し、87,000ドルを下回る場面が見られた。直近60分でレバレッジ・ロング約1.7億ドルが清算され、過去4時間の清算総額は約3.2億ドルに達したとされる。暗号資産市場全体では、わずか数時間で約400億ドル規模の時価総額が失われた。流動性の薄い時間帯で、デリバティブ主導のレバレッジ整理が一気に進んだ形だ。
清算とは、先物取引(無期限先物を含む)において、価格変動によって証拠金が不足した場合、取引所がポジションを強制的に決済する仕組みである。レバレッジ・ロングは、少ない元手で上昇局面の値幅を狙えるため、短期トレーダーや裁定・ヘッジ主体を中心に広く利用されている。2026年に入ってからの上昇基調を見込み、短期投資家がロングを積み上げていた側面もある。一方で、下落局面ではロスカット(強制清算)が成行売りとして市場に流れ込みやすい。
先物取引では、証拠金維持率が一定水準を下回ると、取引所のシステムが自動的にポジションを市場価格で決済する。この際、価格水準を指定しない成行注文が用いられるため、板の厚みが十分でない時間帯では、想定以上に価格を押し下げる結果になりやすい。価格が一段下落すると、周辺水準でレバレッジをかけていた別のポジションの維持率も同時に悪化し、連続的に清算条件を満たすポジションが増える。結果として、実需の売りが増えていなくても、「清算という機械的な売り」が短時間に集中し、価格変動が過度に拡大する。
こうした局面を把握する上で重要なのが、オープン・インタレスト(OI)である。OIとは、未決済の先物ポジションの総量を示す指標で、市場にどれだけのレバレッジポジションが積み上がっているかを測るものだ。価格とともにOIが増加している場合、新規ポジションを伴ったトレンド形成と解釈されやすい。一方、下落と同時にOIが急減する場合は、清算や手仕舞いによるポジション整理が進んでいることを示す。
添付のオンチェーンデータでは、全取引所合算のOIは足元で約284億ドル水準まで低下している。2025年秋に記録した約470億ドル近辺のピークからは大きく縮小しており、レバレッジはすでに一段整理された状態にある。ただし、2026年に入ってからはOIが底打ちし、わずかに持ち直す動きも確認できる。これは参加者が再び先物を使い始めている兆しである一方、調整局面では新たな清算余地が生じやすいことも意味する。
現時点での下落を、ファンダメンタルズの崩れと即断するのは適切ではない。今後の検証点は、清算後に売りが止まるか、参加者が戻る時間帯で現物需要が吸収に回るか、そしてOIや資金調達率が沈静化するかにある。価格水準そのものよりも、「時間」と「参加者」の反応を丁寧に確認することが、30日後に見て間違いになりにくい分析につながる局面と言える。
オンチェーン指標の見方
オープン・インタレスト(OI)は、未決済の先物ポジション総量を示し、市場に積み上がるレバレッジの大きさを測る指標である。価格とともにOIが増加する局面は、新規資金流入を伴うトレンド形成を示しやすい。一方、価格下落と同時にOIが減少する場合は、清算や手仕舞いによるポジション整理が進んでいると解釈される。
