ビットコイン実現損益が示す構造転換──オンチェーンが映す「価格の裏側」【エックスウィンリサーチ】

● 30日実現損益がプラスからマイナスへ転じ、ビットコイン市場は利益確定中心の局面を終えつつある。
● 価格が高値圏でも実現利益は減少しており、上昇モメンタムは内部から弱まっている。
● オンチェーン損益構造は、強気相場の延長ではなく調整フェーズへの移行を示唆している。

ビットコイン市場では、価格の上下とは別のところで、静かな変化が起き始めている。見た目の価格だけを追っていると気づきにくいが、オンチェーンデータを見ると、市場の“中身”が少しずつ変わりつつあることが分かる。

CryptoQuantのデータによると、ビットコイン保有者は2023年10月以来初めて、30日ベースでネットの実現損失を記録する局面に入った。これは「利益を確定する人より、損失を確定する人の方が多くなった」状態を意味する。短期的な値下がりというより、市場参加者の行動が変わり始めている可能性を示すサインだ。

CryptoQuantのCEOである キ・ヨンジュ 氏によれば、2024年12月23日以降、30日間で確定した損失は累積で約6.9万BTCに達している。2023年10月にも小規模な損失局面(約3,000BTC)は見られたが、当時はすぐに回復した。今回の特徴は、損失の規模が大きく、時間をかけて続いている点にある。これは、これまで続いてきた「利益を確定しやすい相場」が一区切りを迎えつつあることを示している。

こうした変化は、30日ベースの実現利益の推移を見るとより分かりやすい。2024年3月には約120万BTC、同年12月にも約110万BTCという大きな利益確定が発生していた。しかしその後、2025年7月には約51.7万BTC、10月には約33.1万BTCまで減少している。

重要なのは、価格自体は高値圏にあったにもかかわらず、確定される利益は減り続けていたという点だ。これは、上昇相場の勢いが、表に見えないところで弱まっていたことを意味する。

このような動きは、過去の相場でも繰り返し見られてきた。2021年から2022年にかけての強気相場の終盤でも、価格は高い水準を保ちながら、実現利益は先に減少し始め、その後に損失が増えていった。つまり、価格が下がる前に、まず「儲かりにくくなる」状態が訪れるのが、これまでの典型的なパターンだ。

今回も同様に、2024年以降は実現利益がピークを更新しながらも、その規模は徐々に小さくなってきた。これは、強気相場が成熟し、新たに利益を得られる余地が減ってきたことを示している。さらに長い視点で見ると、1年累積ベースの実現損益が重要なヒントを与えてくれる。2025年10月には、1年間で約440万BTCもの利益が確定していたが、その後は急速に減少し、2026年初頭には約250万BTCまで低下した。この水準は、2022年3月、つまり前回の弱気相場が始まった頃とほぼ同じだ。

キ・ヨンジュ氏は、実現利益の減少と損失への転換は、ビットコイン価格の「内側の強さ」が弱まっていることを示す典型的なオンチェーンシグナルだと指摘する。価格は流動性やレバレッジによって一時的に支えられることがあるが、実現損益は投資家が実際にどのような判断をしているかをより正確に映し出す。

現在のオンチェーンデータは、ビットコイン市場がこれまでの強気相場の延長線上ではなく、次の段階に入りつつある可能性を示している。短期的な価格の上下だけで一喜一憂するのではなく、実現損益という「価格の裏側」に目を向けることが、これからの市場を理解するうえで重要になりそうだ。

オンチェーン指標の見方

ネット実現損益:ビットコイン保有者が実際に「利益で売ったか、損失で売ったか」を合計した指標で、市場参加者の行動を直接反映する。プラスが続く局面は利益確定が優勢で相場に勢いがある状態を示し、縮小やマイナス転換は上昇モメンタムの低下を示唆する。価格より先に変化しやすいため、相場の転換点を読む手がかりとして重要な指標である。