● DeFiは価格主導ではなく、Ethereumのトランザクション増加に象徴される「利用主導」の拡張フェーズにある。
● TVLや取引件数が高水準を維持しており、投機ではなく金融インフラとしての定着が進んでいる。
● 現時点では緩やかに強気だが、オンチェーン利用の減速が確認されれば見方は修正が必要となる。
現在の暗号資産市場は、明確な強気相場とは言い難い。一方で、下方向への崩れも限定的で、全体としてはレンジ局面に近い状態が続いている。こうした環境下で注目すべきなのが、価格とは別の次元で進んでいるDeFi(分散型金融)の変化だ。
そもそもDeFiとは何か。DeFiとは、銀行や証券会社といった中央管理者を介さず、ブロックチェーン上のプログラムによって金融取引を行う仕組みを指す。送金、交換、貸し借り、利回り運用といった機能を、誰でも24時間365日利用できる点が最大の特徴である。
このDeFiの中核を担ってきたのが、Ethereumチェーンだ。Ethereumは、単なる暗号資産の発行基盤ではなく、金融サービスを動かす「土台」として機能してきた。DeFiの将来性を考える際、「価格が上がるかどうか」よりも重要なのは、「実際に使われているか」である。その利用状況を象徴的に示すオンチェーン指標が、Ethereumのトランザクション数(Transaction Count)だ。
添付のデータが示す通り、ETH価格が大きく伸びない局面でも、Ethereumチェーン上のトランザクション数は長期的に増加傾向を維持している。直近では、1日あたりの取引件数が約250万件前後まで拡大しており、これは単なる投機売買だけでは説明しにくい水準である。DeFiでの取引、ステーブルコイン送金、NFT、インフラ関連の操作など、実務的な利用が積み重なった結果と見るのが自然だ。
この点は、DeFiの性格変化を端的に表している。2021年のように、価格上昇と利用拡大が同時に進む局面とは異なり、現在は価格が落ち着く中でも「使われ続ける状態」が定着しつつある。言い換えれば、Ethereumは投機の舞台から、金融インフラとしての役割を強めている。
実際、DeFi全体の現状を見ても、その傾向は明確だ。DeFiに預けられている資産総額(TVL)は、約1,200億ドル規模と高水準を維持している。価格が調整している局面でも、資金が急激に引き上げられていない点は重要である。これは、DeFiが短期売買の場ではなく、「資産を置いて使う場所」になりつつあることを示している。
また、資金の集まり方にも変化が見られる。現在、TVL上位を占めるのは、貸し借り(レンディング)、ステーキング、そして担保として資産を預ける仕組みだ。分散型取引所(DEX)も引き続き使われているが、主役は「売買」よりも「運用」へと移っている。これは、DeFiが単なる市場ではなく、資本を管理する仕組みに近づいていることを意味する。暗号資産は、すぐに売る対象というより、預けて利回りを生み、別の用途に再利用される資産として扱われ始めている。
背景には、TradFi(伝統金融)との距離感の変化もある。近年、トークン化国債や決済用途など、規制を前提とした形でブロックチェーンを活用する動きが進んでいる。これはDeFiが既存金融を置き換えるというより、金融システムの一部として組み込まれ始めていることを示す動きだ。
現時点でのDeFiは、派手な成長を見せる段階ではない。しかし、Ethereumのトランザクション数が示すように、利用は静かに、しかし着実に積み上がっている。価格が動かなくても使われ続ける状態は、インフラとして成熟し始めた証拠とも言える。
オンチェーン指標の見方
EthereumのTransaction Count(Total):Ethereumチェーン上で実行された取引の総数を示し、ネットワークがどれだけ実際に使われているかを測る基本指標である。価格が横ばいでもこの数値が増加している場合、投機ではなくDeFiや送金などの実需が積み上がっている可能性が高い。逆に取引件数が継続的に減少する局面では、利用低下や活動停滞を示すシグナルとして注意が必要となる。
