ステーブルコインが日常の決済利用にシフト──暗号資産カード支出が年180億ドルに到達

ブロックチェーン分析会社Artemis(アルテミス)による最新レポートで、暗号資産カード(クレジット/デビット)が世界の支出インフラとして急成長していることが明らかになった。2023年初頭には月間約1億ドルだった暗号資産カード決済の取扱高は、2025年後半には月間15億ドル超にまで拡大している。これを年換算すると約180億ドル(約2兆8800億円、1ドル=160円換算)規模に達し、ステーブルコインのピアツーピア送金額(約190億ドル、約3兆400億円)と肩を並べる水準まで成長している。

この成長の背景には、ステーブルコインが日常の支払い手段として定着しつつある実態がある。特に米ドル連動型のUSDコイン(USDC)とテザー(USDT)がカード決済で圧倒的な存在感を示し、Artemisの分析ではこれら2銘柄でカードに預けられる担保の約96%を占めていると報告されている。

ステーブルコインが直接店舗に受け入れられる仕組みはまだ普及が限定的であり、多くの店舗は暗号資産を直接決済手段として導入していない。そこで既存の決済インフラであるVisa(ビザ)やMastercard(マスターカード)のネットワークを通じ、カード決済時に裏側でステーブルコインが即時に法定通貨へ換金される仕組みが普及の鍵となっている。実際、Visaはカード処理量の90%超を占めるまでに存在感を強めており、Artemisは早期のインフラ連携が大きな要因だとしている。

地域別では、インドやアルゼンチンなどでステーブルコインのカード利用が特に顕著だ。両国ではインフレ対策や既存の支払い手段の課題を背景に、USDCが全体の約半分近いシェアを占める独自の利用パターンも見られるという。

Artemisのレポートは、ステーブルコインが単なる投資資金ではなく、クレジットカードのインフラによって日常的な決済の重要な基盤として機能し始めていることを示している。今後、加盟店側の直接受け入れやインフラ改善が進むことで、カード経由の支出はさらに拡大する可能性がある。

|文・編集:井上俊彦
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