オンチェーン分析とは何か──既存金融と異なる市場分析の考え方【エックスウィンリサーチ】

●オンチェーン分析は、価格ではなく需給構造を見る手法。
●「誰が動いているか」を把握でき、相場の質を判断できる。
●万能ではないが、市場の健全性を測る重要な視点。

オンチェーン分析とは、ブロックチェーン上に記録された取引データを直接分析し、市場の需給や参加者の行動を読み解く手法である。暗号資産は、取引履歴・残高・移動量といった情報が公開台帳として誰でも検証可能であり、この「完全な可視性」を前提にした分析が可能だ。

既存金融との最大の違いは、データの透明性と粒度にある。株式や債券市場では、投資家の売買行動はブローカーや取引所の内部に閉じており、外部から確認できるのは価格や出来高が中心だ。誰が売っているのか、長期投資家なのか短期筋なのかといった情報は、推測に頼らざるを得ない。

一方、オンチェーン分析では、取引所への資産流入・流出、大口投資家の蓄積や分配、長期保有者の行動変化などを、価格変動よりも先に確認できる。これは、価格という「結果」ではなく、需給構造という「原因」を直接見ることができる点で、既存金融にはない視点である。

オンチェーン分析が重要とされる理由は、相場が動いた後の解釈ではなく、構造が崩れているのか、それとも維持されているのかを判断できる点にある。例えば、価格が下落している局面でも取引所残高が減少していれば、売り圧力は限定的であり、下落は構造的な弱気ではなく調整と解釈できる。

また、参加者別の行動を分解できる点も大きい。同じ下落局面でも、短期投資家が投げているのか、長期保有者が売却に転じているのかでは、相場の意味合いは大きく異なる。オンチェーン分析は「誰が動いているか」を可視化できるため、相場の質を見極めることが可能になる。

さらに、暗号資産市場はデリバティブ比率が高く、レバレッジによる歪みが生じやすい。オンチェーンデータと先物市場の情報を組み合わせることで、実需による動きなのか、清算主導の一時的な変動なのかを見分けることができる。

ただし、オンチェーン分析は万能ではない。OTC取引や取引所内部での売買、カストディ内の移動などは直接観測できず、常に「市場全体の一部」を見ているに過ぎない点には注意が必要だ。

それでも、価格だけでは見えない市場内部の構造を客観データで確認できる点において、オンチェーン分析は暗号資産市場を理解するための基礎的かつ不可欠な視点となっている。短期ノイズに振り回されず、相場の現在地を冷静に把握するための道具として、今後も重要性は高まり続けるだろう。

オンチェーン指標の見方

Long Term Holder SOPR:長期保有者が暗号資産を売却する際に、利益で売っているのか、それとも損失を抱えたまま手放しているのかを示す指標である。値が1を上回っていれば利益確定売り、1を下回っていれば損失覚悟の売却を意味する。この指標が安定している局面では、長期保有者が含み益を持ちながらも売却に踏み切っておらず、市場の供給圧力は限定的と判断できる。

Exchange Inflow(Total)– All Exchanges:すべての取引所に流入する暗号資産の総量を示す指標である。流入が増加している場合は、売却準備のコインが市場に持ち込まれている可能性が高く、売り圧力の強まりを示唆する。一方で流入が低水準にとどまっている場合、実際の売り需要は限定的であり、価格変動があっても需給構造は崩れていないと解釈できる。