ヴィタリック・ブテリン氏が語る2026年のイーサリアム──「世界のコンピューター」になるために

2026年の幕開けとともに、Ethereum(イーサリアム)の共同創設者、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏は一連のXへの投稿を通じ、ネットワークの劇的な進化と今後の道標を提示した。彼のメッセージは、単なる技術的進捗の報告に留まらず、イーサリアムが真の「世界のコンピューター」として歩むべき哲学的な再定義を含んでいる。

ブテリン氏によると、2025年はイーサリアムにとって「実行の年」だった。ガスリミットの引き上げやブロブ(Blob)容量の拡大、ノードソフトウェアの品質向上が進み、特にzkEVM(ゼロ知識証明を用いたイーサリアム仮想マシン)が実用的なパフォーマンス・マイルストーンを達成した。また、データ可用性サンプリング(PeerDAS)のメインネット実装により、ネットワークの基盤能力は根本的に強化されたという。

「トリレンマの解決」を宣言

最も大きな衝撃を与えたのは、長年の課題であった「ブロックチェーンのトリレンマ(分散性・セキュリティ・拡張性の両立)」が、ついに「理論ではなく稼働するコード」によって解決されたという宣言だ。ブテリン氏は、PeerDASによる高い帯域幅とzkEVMによる効率的な検証の組み合わせにより、分散性を損なうことなくスケーラビリティを確保する道筋が完成したと強調。現在は「安全性の最終的な硬化(Hardening)」を残すのみの段階にあるとした。

2026年の展望

2026年、イーサリアムはzkEVMに基づくノード運用の一般開放や、さらなるガスリミットの大幅な引き上げを予定している。また、レイヤー2間の断片化を解消し、ユーザーが単一の「イーサリアム」として利用できる体験(ERC規格の普及等)を重視する。ロードマップでは、5月までに100ビット、年内には128ビットの証明セキュリティ達成を掲げており、堅牢性の追求が加速する見通しだ。

ブテリン氏はまた、イーサリアムの核心は利便性や効率性ではなく「レジリエンス(回復力・抗堪性)」にあると再定義した。開発者が消え、インフラが攻撃を受けても稼働し続ける「ウォークアウェイ・テスト」への合格を重視し、検閲耐性と個人の主権を守ることがイーサリアムの存在意義であると説いた。

ブテリン氏が描く理想像

ブテリン氏は、イーサリアムが短期的なトレンドを追う「メタ」から脱却し、自由でオープンなインターネットの中核インフラになるべきだと考えている。企業や政治の干渉を受けず、ユーザーを「企業の部下」ではなく「対等な参加者」にするレジリエントな空間こそが、彼が2030年に向けて見据える理想の姿である。基盤が整いつつあるとし、2026年以降はこれを実運用レベルで拡張していくフェーズに入ると述べている。

|文・編集:井上俊彦
|画像:2025年9月、ZK Tokyo主催のイベントに登壇したブテリン氏(撮影:NADA NEWS編集部)