2008年10月。

インターネット上の暗号技術のメーリングリストに、ある論文が投稿されました。

タイトルは、「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System(ビットコイン: P2P 電子通貨システム)

投稿者の名前は、サトシ・ナカモト。

この論文には、こんなアイデアが書かれていました。

銀行などの金融機関を通さずに送金できる仕組み

今でこそ「ビットコイン」という言葉を聞いたことがある人も増えましたが、この論文を読んだのは当時、暗号技術のコミュニティのごく一部の人たちだけでした。

そして、この投稿をしたサトシ・ナカモトという人物についても、

  • 本名なのか
  • 個人なのかチームなのか
  • どこの国の人なのか

今もわかっていません。

しかし、この論文こそが「ビットコイン」という新しい仕組みの出発点だったのです。

インターネットのお金は、長年の夢だった

しかし、インターネット上で使えるお金を作ろうという試みは、実はビットコインが初めてではありません。

1990年代から、さまざまなプロジェクトが登場していました。

たとえば、

  • DigiCash
  • e-gold
  • Hashcash
  • b-money

などです。

これらはどれも、「インターネットで使える新しいお金」を目指していました。

しかし多くの場合、

  • 中央の会社が必要だったり
  • 政府の規制で止められたり
  • 不正を防ぐ仕組みが難しかったり

と、長く続きませんでした。

つまり、「銀行を通さずに動くお金」を作ることは、長年の難しい課題だったのです。

だから、考案者であるサトシ・ナカモトがやったことは、まったくゼロから新しい技術を作ることではありませんでした。

それよりも、

これまでに存在していた技術や研究、アイデアを組み合わせて、その課題を解決する仕組みを作った

ことがまさに画期的だったのです。

それが、ビットコインです。

その頃、世界は金融危機の中にあった

サトシが論文を公開した2008年は、世界の金融システムが大きく揺れていた時期でもありました。

その象徴的な出来事が、リーマンショックです。

2008年9月、アメリカの大手投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が破綻した出来事は、まだ記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。

この出来事をきっかけに、

  • 世界中の株価が急落
  • 多くの金融機関が危機に直面
  • 各国政府が銀行の救済に動く

という状況になり、ニュースでは連日、金融危機の話題が報じられていました。

多くの人がそのとき、「今の金融システムは本当に大丈夫なのだろうか…」と疑問を持ち始めました。

そんな時代の中で、サトシ・ナカモトの論文(通称、ビットコイン・ホワイトペーパー)は公開されました。

最初のブロックに刻まれたサトシの問い

論文が公開されてから数ヶ月後の2009年1月3日、ビットコインのネットワークが動き始めました。

ビットコインでは、取引の記録が「ブロック」と呼ばれる単位にまとめられ、順番に積み重なっていきます。

その最初のブロックは、「ジェネシス・ブロック」と呼ばれています。

そして、このジェネシス・ブロックには、ある文章が刻まれていました。

 The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for banks

これはイギリスの新聞「The Times」の見出しで、「銀行への2回目の救済が目前」という意味です。

つまりサトシは、ビットコインの最初のブロックに、当時の金融ニュースの見出しをあえて刻みました。

このニュースが意味していたのは、

銀行が大きな損失を出しても、最終的には政府(つまり税金)によって救済される可能性がある

という状況でした。

なぜこの言葉を残したのか、サトシ自身は説明していません。

しかし多くの人は、このメッセージを今のお金の仕組みに対する静かな問いだと受け取っています。

なぜ銀行は救済されるのか。

なぜそのしわ寄せが、最終的に私たちの生活に影響してくるのか。

こうした疑問は、「お金がどのように作られているのか」という話にもつながっていきます。

このテーマについては、以前の記事でもわかりやすく解説しています。

▶参考記事:給付金や支援金が増えるほど、家計が「苦しくなる」ってどういうこと!?

小さな実験は世界に広がった

ビットコインが誕生した当初、それを使う人はほんのわずかでした。

価値もほとんどなく、当時は「インターネット上の実験」のような存在です。

しかし、少しずつ興味を持つ人が増え、

  • プログラマー
  • 研究者
  • 起業家

など、さまざまな人が関わるようになりました。

インターネットを通じて世界中に広がり、ビットコインは徐々に知られる存在になっていったのです。

そして15年以上、止まっていない

そして、もう一つ大切なことがあります。

ビットコインは、2009年の誕生から今日まで、一度も止まったことがありません。

年末年始も、真夜中も、世界のどこかで混乱が起きているときも。

今、アメリカとイスラエル、そしてイランの間では深刻な戦争が起きていますが、それでもビットコインのネットワークは、24時間365日、動き続けています。

(※参考記事:実は一度も止まっていない。ビットコインは24時間365日動き続ける“お金”。)

最初は小さな試みとして始まった仕組みですが、今では世界中で少しずつ受け入れられる存在になっています。

サトシ・ナカモトが残したもの

サトシ・ナカモトはビットコインを考案したあと、2011年ごろに突然インターネットから姿を消しました。

それ以降、本人からのメッセージは一切ありません。

正体は今もわかっていません。

でも、サトシが作ったビットコインだけは残りました。

そして今も、誰にも止められず、世界中で動き続けています。

ビットコインは単なるデジタルなお金ではありません。

それは、

「今のお金の仕組みは、このままでいいのだろうか?」

という問いを、世界に投げかける存在でもあるのです。

|文:yutaro
|画像:AIにより生成した、コンセプトを伝えるためのイメージビジュアルです

<本連載の著者>

yutaro

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