便利すぎる国では、新しい選択肢が見えなくなる
日本ほど「支払い手段」が豊富な国は珍しい。
銀行口座はほぼ誰でも持てる。クレジットカードや電子マネーも当たり前。SuicaやPayPayがあれば日常生活に不自由はない。
この構図は、かつての日本の携帯電話市場とよく似ている。iモードが全盛期だった頃の日本の携帯電話は完成度が高く、「これ以上の進化は必要ない」と思われていた。
しかし、iPhoneの登場によって状況は一変した。
完成度の高いシステムは、人の思考を止める。「今で十分」「変える理由がない」という空気が、新しい技術を遠ざける。日本でビットコインが広がらない理由は、「技術が未熟だから」でも「危険だから」でもない。
すでに便利すぎて、考えなくても生きていけるからなのだ。
ビットコインは、投資以前に“自分で守る手段”になる
日本では、ビットコインはどうしても「儲かるかどうか」で語られがちだ。
だが実際には、もっと生活に近い場面で意味を持つ。
世界では約17億人の成人が銀行口座を持てず、貧困層はクレジットカードを使えない人が多数派だ。そうした地域では、ビットコインは「投資商品」ではなく、それしか選択肢がない金融インフラなのだ。
日本でも、専業主婦や学生など、経済的に自立しにくい立場の人はどうだろう。自分名義の銀行口座を自由に使えない、クレジットカードが作れない、オンライン決済が通らない。こうした制約は今も存在する。配偶者名義の口座は、万一の際には即座に凍結される。遺族年金も、かつてのように一生支給される制度ではなくなりつつある。
こうした現実を前にすると、ビットコインは「ハイリスク資産」ではなく、個人が自分の資産を自分で管理するための手段として、別の意味を持ち始める。
私たちは「考えなくていい環境」に慣れすぎた
日本でビットコインが広がらない理由は、情報が少ないからではない。検索すれば専門用語だらけの記事や動画が並んでいる。
でも、初心者が気軽に質問できる場所が少ない。株式投資や保険、不動産には必ず「説明する人」がいる。ビットコインには、それが決定的に不足している。
さらに日本人は,自分で行動を起こすことに消極的で、多くの人が現状維持を選び、考えることを止めてしまう。その結果、「難しそうだからやめておこう」と考える人が増えていく。
ビットコインは、日本にとって今すぐ必要なものではないかもしれない。しかし、必要になってから理解しようとしても遅い技術であることは確かだ。
便利すぎる国に生きているからこそ、一度立ち止まって考える価値がある。
私たちは本当に、選択肢を持っているのか?
詳細は書籍『ビットコイン持ってますか?: なぜ日本人は「お金の話」と「ビットコイン」を避けるのか?』から。
書籍概要
タイトル:『ビットコイン持ってますか?: なぜ日本人は「お金の話」と「ビットコイン」を避けるのか?』
著者:株式会社ANAPホールディングス代表取締役社長・フルグル合同会社CEO
川合林太郎

